カルチュラル・タイフーン2021シンポジウムの概要について

みなさま

カルチュラル・タイフーン2021のシンポジウムの詳細が決まりましたので、シンポジウムの概要についてご連絡致します。

下記の実行委員長からのご説明にもありますように、カルチュラル・タイフーン2021は、4つのシンポジウムのみを現地開催といたします。

カルチュラル・タイフーン2021 開催方法につきまして

なお、個人・グループ発表およびプロジェクトワークスの詳細につきましては、現在スケジュールを最終調整しておりますので、今しばらくお待ちください。

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【シンポジウムの概要】

以下のとおり、決定いたしました。

 

  • 6月26日(土) 9:30~11:30
シンポジウム① スポーツとアートの汽水域

司会:  竹﨑一真(成城大学)

登壇者:

町田樹(國學院大學)

高橋洋介(角川武蔵野ミュージアム)

山本敦久(成城大学)

私たちがスポーツに惹きつけられるとき、そこには必ず“アート”がある。そしてそのアートは、近代スポーツを変革する契機として今浮上しつつある。

町田樹氏が取り組んできたフィギュアスケートは、“アート”であるからこそ新たなスポーツとしての可能性を拓いた。しかし、そうしたアーティスティックスポーツの世界は、競技化が進むにつれてアートの側面が後景化し、点数中心の競技性に埋没するという矛盾と困難を抱え始めている。対して町田氏は、数字に還元されえない美を表現・創作する競技者が切り拓くアートとしてのスポーツに注目することで、スポーツのさらなる可能性を見いだそうとしている。また、昨年金沢21世紀美術館で「de-sport」展を企画した高橋洋介氏は、現代アートの歴史においてスポーツの空間や意味を芸術家たちが組み換えてきたことに着目し、スポーツの概念にラディカルな問い直しを迫ると同時に、アートそれ自体にも刺激を与えようとしている。そして山本敦久氏は、C.L.R.ジェームズが描いたように民衆にとってのスポーツがときに植民地主義や人種差別、性差別といったものに抗するアート(技法/技芸)になりうることに着目している。

スポーツとアートが混じり合う汽水域。そこに広がる風景は、スポーツ/アートの二元論を瓦解させ、私たちに生きるための術(アート)を与えてくれるのではないだろうか。本シンポジウムは、元競技者であるスポーツ研究者、キュレーター、社会学者という三者の汽水域的視点から、スポーツとアートの現在について議論を展開していく。

 

 

  • 6月26日(土) 16:00~18:00
シンポジウム② 「伝統と革新――金沢からグローバルに思考する」

司会:毛利嘉孝(東京芸術大学大学院教授・社会学/文化研究)

講演者:

菊池裕子(金沢美術工芸大学教授・芸術学/工芸史)

長谷川祐子(金沢21世紀美術館館長・東京芸術大学大学院教授・キュレーター)

 

基調講演1「工芸は逆襲できるか?:コロニアルな過去、現在の主体性、そして持続可能な未来」(菊池裕子)

基調講演2「「成る」ことと「在る」ことのエコロジー:今日における伝統の情報化とモノとしての手仕事」(長谷川祐子)

討 議:菊池裕子x長谷川祐子x毛利嘉孝

伝統と革新—-しばしば二項対立で語られる二つの概念ですが、実際にはこの二つはもっと複雑な関係を持っています。最も伝統的なものが革新性をもっていたり、逆に革新的なものの根源に伝統が潜んでいたりすることは決して珍しくありません。そしてこのことは、過去から現在、そして未来へとリニアに続く単線的な「歴史」という概念を問い直すことを要求します。

 本シンポジウムは、「伝統工芸」と「現代美術」という一見異なるカテゴリーに見える二つの領域の交錯点を、まさにこの二つが交錯する金沢という都市から考えようというものです。長くロンドン芸術大学で教鞭を取り2019年に金沢工芸大学教授に就任した、東アジアの工芸史を専門とする菊池裕子氏、そして国際的な展覧会を数多く手掛け、この春21世紀美術館館長に就任したキュレーターで、東京藝術大学大学院教授の長谷川祐子氏の二人を迎え、伝統と革新の同時代性について金沢から/グローバルな視点から議論します。

 

 

  • 6月27日(日)9:30~11:30
シンポジウム③ 「裏日本」から戦後を再考する―「内灘闘争―風と砂の記憶―」展をめぐって

司会: 小笠原博毅(神戸大学)

登壇者:

稲垣健志(金沢美術工芸大学)

高原太一(東京外国語大学)

星野太(東京大学)

水口裕子(内灘町民)

本康宏史(金沢星稜大学)

「内灘闘争―風と砂の記憶―」制作メンバー

本シンポジウムの目的は、石川県河北郡内灘町に残る(残している)「内灘闘争」の記憶・記録を手掛かりに、「裏日本」から戦後を再考し、自分たちのアクチュアルな問題としてこれを引き受けていく回路としてのアートの可能性を探ることにある。

1952年、日本政府から内灘村(当時)の砂丘地を、米軍の砲弾試射場に使用したいとの申し出が石川県にあった。一旦は期限付きで試射場としての使用が許可されたものの、砲弾の炸裂音や、約束に反し永久使用を目指す政府への反感から住民の怒りが高まり、53年、戦後初となる大規模基地反対運動「内灘闘争」に発展した。

この「内灘闘争」には、清水幾太郎や丸山真男をはじめとする多くの知識人も参加しており、それ自体興味深い。しかし、それ以上に我々の目を引くのは、現在の内灘町には「内灘闘争」に関する資料館「風と砂の館」があり、米軍施設の一部であった射撃指揮所、着弾地観測所がそのまま残されていることである。とは言え、こうした記録・記憶を「遺産」にしたり、「財」にしたりすることに関心があるわけではない。むしろ、そのようにして「内灘闘争」を「過去に留めて物象化」することに抗い、これを自分たちの問題としてどう引き受けていくか、その回路としてのアート可能性をオーディエンスとともに考えてみたいのである。

そのためにシンポジウムで取り上げるのが、金沢美術工芸大学の教員・院生によるグループ展「内灘闘争―風と砂の記憶―」である。

各メンバーが彫刻、インスタレーション、油画、映像などそれぞれの表現方法を用いて、「内灘闘争」に着想を得た作品を制作し、展示する。このグループ展は、「風と砂の館」、「指揮所跡」、「観測所跡」などを会場に、カルタイの日程にあわせて開催する予定である。

 

 

  • 6月27日(日)15:30~17:30
シンポジウム④  現代を徘徊する「ターナーの奴隷船」―レイシャルキャピタリズム、あるいは ‘Back’ Lives Matterをめぐって

司会: 稲垣健志(金沢美術工芸大学)

登壇者:

井谷聡子(関西大学)

小笠原博毅(神戸大学)

川端浩平(津田塾大学)

1781年、イギリスの奴隷船ゾング号が100人を超える奴隷を海に「捨てた」。いわゆる「ゾング号事件」である。画家J. M. W.ターナーは、この事件に触発され『奴隷船』(1840年)を描き上げた。そのターナーの奴隷船が現代を徘徊しているのだ。次々と海に捨てられる「使い物にならなくなった」奴隷たちは、交換可能な労働力として「消費される」現代の我々の姿そのものである。この資本主義という経済システムが続く限り、ターナーの奴隷船は徘徊し続けるだろう。

かつてセドリック・ロビンソンは、奴隷制・人種差別を土台にした資本主義を、レイシャルキャピタリズムと呼んだ。近年、そのロビンソンの議論を発展的に継承し、Black Lives Matterなどの反レイシズム運動を、レイシャルキャピタリズムに対する異議申し立てととらえる研究が数多く発表されている。そう、Black Lives Matterとはターナーの奴隷船上での蜂起なのである。こうした成果を踏まえて、本シンポジウムは、Black Lives Matterを「現代アメリカ」の「人種問題」に矮小化してはならないという共通認識からスタートする。レイシズムとは現象や「倫理」の問題ではなく、システムや構造の問題なのだ。つまり、資本主義の「裏」に追いやられ、このシステムを「裏支えする」者たちすべての問題であり、その意味において、‘Back’ Lives Matterこそ本シンポジウムのテーマだと言えよう。

シンポジウムでは司会を務める稲垣がまず、Gargi BhattacharyyaがRethinking Racial Capitalism (2018) で提示した「レイシャルキャピタリズムをめぐる10のテーゼ」を手掛かりに、本企画の趣旨説明をおこなう。それを受けて、小笠原は、レイシャルキャピタリズムとは資本主義の亜種なのか、それとも資本主義自体が常にすでに人種化されているのか。それは視点の問題なのか、対象の問題なのか。ターナーの絵を手がかりに、その答えを海から模索する。次いで井谷が、「新大陸」アメリカにヨーロッパからの入植者が持ち込んだレイシズムとジェンダー・セクシュアリティの規範によって、非白人女性らが資本主義の中でどのように位置付けられ、搾取されてきたのか、ターナーの『奴隷船』の中で沈みゆく、鎖に繋がれた女性身体を起点として考察する。そして川端は、現代日本の在日コリアンやアフリカ系ルーツのラッパーたちの文化表現やライフスタイルの志向性に着目し、レイシズムと資本主義を通じて再編成される文化とは異なるオルタナティヴな実践について検討する。その後は、フロア、およびライブ配信を視聴してくれているみなさんへと議論を開き、この奴隷船への逆襲の方法を一緒に考えてみたい。

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以上です。

カルチュラル・タイフーン2021実行委員会