カルチュラル・タイフーン2022 基調講演・シンポジウムの詳細について
post on : 2022.08.19
みなさま
カルチュラル・タイフーン2022の基調講演・シンポジウムについて詳細が決まりましたので、ご連絡いたします。
基調講演はZoomウェビナーでの配信、シンポジウムはすべて現地開催+同時オンライン配信(詳細は後日HPにて告知)をいたします。
————————-
【基調講演の概要】
9月16日(金)18:00~20:00
THE FEMINIST POLITICS OF RESILIENCE: STUART HALL’S METHODOLOGY, NEOLIBERALISM AND NEW FIGURATIONS OF FEMININITY
フェミニストによるレジリエンスの政治:スチュアート・ホールの方法論、ネオリベラリズム、そして新しい女性性の形成
※2022年9月7日付でタイトルの変更がありました。
登壇者:Angela McRobbie (コベントリー大学クリエイティブ文化研究所客員教授・ロンドン大学ゴールドスミス校名誉教授)
司会:小笠原 博毅(神戸大学大学院国際文化学研究科教授)
通訳:井谷 聡子(関西大学文学部准教授)
This lecture draws on the conjunctural work of Stuart Hall to understand two ‘moments’ in the social and cultural management of women today. These are the post-feminist times from 1997-2007 and then the more recent decade where the new feminist activism has forced a series of re-alignments and re-calibrations especially within the gender regime of consumer culture. The lecture draws on The Aftermath of Feminism (2008) and Feminism and the Politics of Resilience (2020).
〈邦訳〉
本講演ではスチュアート・ホールの研究と自分自身の研究とを結びつけながら、今日、女性たちを社会的・文化的に管理する際に現れる二つの「瞬間」について理解する。1997年から2007年までのポストフェミニズムの時代とそれに続く10年間は、とりわけ消費文化におけるジェンダー体制のもとで、新たなフェミニストのアクティビズムが一連の再調整と再較正(=規範的なものとの間に生じたズレの修正)を強いられた時期である。本講演では、2008年に出版された『フェミニズムの波のその後で(The Aftermath of Feminism)』と2020年の『フェミニズムとレジリエンスの政治(Feminism and the Politics of Resilience)』(邦訳、2022)を題材に、フェミニズムとレジリエンスの政治について解説する。
*講演の内容は、当日基調講演の参加者にのみ日本語訳を配布予定です。
【シンポジウムの概要】
9月17日(土)10:00~12:00
シンポジウム① 集団的創造力がもたらすもの:版画運動からみるもうひとつの政治
登壇者:クリスティ・ウン(インデペンデント・リサーチャー)
町村 悠香(町田市立国際版画美術館 学芸員)
A3BC(Anti-War, Anti-Nuclear and Arts of Block-print Collective: 反戦・反核・版画コレクティブ)
司会:毛利 嘉孝(東京藝術大学教授)
しばしば「創造力」は個人の才能という観点から語られがちですが、そうした近代的な個人主義に抗して、より民主的で協働的な創造性のあり方を探る試みが、教育や社会運動の現場では行われてきました。版画による作品の制作はその典型的な実践例でしょう。コンピュータとインターネットによってデジタル化された情報とイメージが瞬時に流通する現代においても、このローテックでアナログな版画という複製メディアはトランスナショナルな文化的・政治的連帯を示すメディアとして重要な役割を果たしています。
このシンポジウムでは、木版画というメディアが歴史的に美術教育や社会運動にどのような役割を果たしてきたのかを検証しつつ、グローバル化の時代にどのように文化と政治の交錯点を生み出しているのか、そして、その集団的想像力の可能性とは何かを考えます。
9月18日(日)10:00~12:00
シンポジウム② 抵抗の形を模索する東アジアのフェミニズムムーブメント
登壇者:熱田 敬子(早稲田大学)
金 美珍(大東文化大学)
曹 曉彤 (香港クリスチャン・カウンシル事務局長補佐)
フィービーマン*(香港城市大学クリエイティブ・メディア学院副教授/
マルチメディア・アーティスト、インディペンデント・プロデューサー)
(*主として自己の探究をきっかけとした作品を作っており、体制を批判し規制の概念に挑戦している。材料の形を変えて、特別な意味を伝える手法を好む。96年に初めてフード・シリーズと名付けたアート展で注目され、その後生理ナプキン・フラワーシリーズや映像作品「慧慧」などを、香港だけでなく広く世界で発表してきた。近年は、性暴力のイシュー、住居問題などに関する作品を通じて、香港におけるソーシャリー・エンゲージド・アートを追求している。https://phoeberelationalart.wordpress.com/about-the-artist/ )
司 会:張瑋容(同志社女子大学)
梁・永山聡子(成城大学)
権威主義的国家、社会、組織、慣習、規範などとどう対抗していけばいよいだろうか?『ハッシュタグだけじゃ始まらない ー 東アジアのフェミニズム・ムーブメント』(2022)は、フェミニズム運動を通して、あらゆる抑圧からの解放をもとめて闘う東アジアの現在地である。その抵抗の形は様々であり、その豊かさから私たちは何を知ることができるだろうか、このシンポジウムを通じて問いたい。
9月18日(日)16:00~18:00
シンポジウム③ フェミニスト・カルチュラル・スタディーズとポストフェミニズムの破断点
登壇者:小川公代(上智大学外国語学部)
菊地夏野(名古屋市立大学人文社会学部)
河野真太郎(専修大学国際コミュニケーション学部)
司 会:田中東子(東京大学大学院情報学環)
基調講演を行ったアンジェラ・マクロビー氏の初翻訳書2冊(『フェミニズムとレジリエンスの政治ージェンダー、メディア、そして福祉の終焉』青土社および『ビー・クリエイティブー新しい文化産業とジェンダー(仮)』花伝社より10月に刊行予定)の内容を踏まえ、まずは登壇者3名にマクロビーが2008年に再概念化を行いフェミニスト・カルチュラル・スタディーズの議論と研究を活性化させることにつながった「ポストフェミニズム」という現代フェミニズムを枠付ける状況について問題提起をしていただく。そのうえで、ポストフェミニズムというジェンダー体制による女性たちの統制をめぐる問題と、そこからの離脱の可能性について討論していく。
————————-
以上
カルチュラル・タイフーン2022実行委員会