Rock the Boat! / 波風を立てろ!


 カルチュラル・タイフーンの基本理念、それは、グローバル社会に潜む問題を様々な観点から提起し、参加者が垣根や立場を乗り越え、共に表現し、未来への展望を議論するということです。 学術発表と、社会問題への取り組みと、創発的な文化表現とが、「顔の見える交流」を通じて現場を共有する。 まず、この基本に立ち返ることからスタートしたいとおもいます。

 多様で雑多な人々を巻き込もうとするカルチュラル・タイフーンの吸引力を再活性化したい。 台風の予測不可能な移動力と、国境にとらわれず何処であろうがおかまいなしに突き抜けていく大胆さを取り戻したい。 陸に上がると失速してしまう台風を「外洋」へと導き、大きな波と風とを起こしたい。 そうした思いから、「Rock the Boat! / 波風を立てろ!」、これを今回のメイン・テーマとして提案します。

 「波風を立てる」とは、「常識を揺るがす」、という意味でもあります。 我々は、次の3つの柱に沿って、「当たり前だと思っていた考え方に疑問を突き付ける」ことを試みます。

 1.リージョナルな思考を越える  「領域」や「圏域」に縛られる思考を再考する
 2.移民・労働・貧困       労働や貧困を「日本人」だけの問題としない
 3.カウンター・ノスタルジア   記憶の語られ方、歴史の作られ方を真剣に考える

 「外洋」への広がりと「他所」への繋がりを再確認するには、国際港湾都市としての神戸がもつ地の利が活かせるでしょう(いや、ここでは「海」の利といったほうがいいかもしれません)。 そして、今回の会場となる「海外移住と文化の交流センター」ほど、それに相応しい施設はありません。 1928年に「国立移民収容所」として開設されて以来、ブラジルを中心に多くの移民が旅立って行く際の基地となったのが、本センターでした。 人々はここから港までの一筋の道を下って船へと乗り込み、その船は遠洋へと船首を向けたのです。

 移民基地としての役目を終えた現在では、本施設は南米移民の歴史と記憶を保存する資料館となるとともに、在日外国人の支援や、内外のアーティストの制作と表現の場ともなっています。 この場所で展開されている様々な活動と共振することで、カルチュラル・タイフーンは、社会活動と芸術生産のリアルな現場により近接していくことができるでしょう。

  ところで、移民たちに数十日にも及ぶ長い航海生活に備えさせるため、センターの内部は船内を模してデザインされています。 つまり、ある意味で、この建物自体がひとつの「船」でもあり、ここに脚を踏み入れた時点から移民たちの航海は始まっていたともいえます。 我々もこの船に大勢で乗り合い、船を大きく揺らしましょう。船頭は多ければ多いほどよいでしょう。 我々の船はすでに山上にあるわけですし、なによりも波風を立てるのが目的なのですから。

Rock the Boat!
梅雨明けの神戸で湿気を含んだ大きな台風を起こしましょう。