カウンター・ノスタルジア


  日時:7月24日(日) 15:30-17:00  場所:メインホール
メインパネル3:カウンター・ノスタルジア
 このパネルは、日本人(=日系)移民の記憶と忘却、語りと沈黙に焦点を当てる。細川周平は、石川達三の小説『蒼氓』に描かれる、ブラジル出稼ぎ農民女性のひたすらな忍耐の姿と、その姿が日系移民社会の「心の支え」となってきた意味を考察する。西成彦は、ラフカディオ・ハーンが目にした「日本人苦力」の記事、すなわち1894年のグアドループ移民の史実を題材に、これら「浦島太郎」たちの物語と,「日本人」の記憶とのかかわりを問い直す。「日本人/移民」というテーマは、それ自体、わたしたちの「日本人」についての了解を揺さぶらずにはいられないだろう。
パネリスト1:細川 周平 (国際日本文化研究センター)
石川達三『蒼茫』の舞台で
 石川達三『蒼茫』(1935-39)はブラジル移民を扱ったもっとも有名な小説で、ここ神戸移民収容所から始まる。冒頭の雨は第一部の収容所、第二部の船の陰鬱な気分を先取りし、全国から出稼ぎとして南米行きに向かう貧農の搾取を現実主義的に描いている。プロレタリア小説と異なり、悪辣な移民会社への怒りは抑えられ、出稼ぎ農民の忍耐に焦点があてられている。愚かしいがどうにか生き延びる農民にひそかに喝采が送られている。第三部は一転して明るいトーンで、ブラジルの原始共産主義的な農村生活を描いている。錦衣帰郷を支えに旅立った出稼ぎが数年後にはブラジルに同化してずるずると滞在を延長し、故郷を忘れている。これははからずも移民奨励の国策に適った描写になっている。社会の底辺を共感をこめて描くことは、これ以降、石川の作風として確立した。
 強姦されても黙って耐えたヒロインお夏はフェミニズムの立場からは否定されようが、サンパウロの日系老人施設には、彼女に捧げた句碑が建っている。かわいそうな移民妻への同情は、老いた移民の心を支えている。学問とは別のところで発揮される文学の力について述べたい。
パネリスト2:西 成彦 (立命館大学)
クーリーの記憶について
 日本の昔話で有名な桃太郎と浦島太郎は、ある意味、表裏のようなキャラです。しかし、歴史を考えるときには、戦場に斃れた桃太郎、打ちしおれて復員した桃太郎、あるいは彼方へと旅立ったまま、そこで幸せに暮らしたわけでも、故郷に錦を飾ったわけでもない浦島太郎たちのことが重要です。
 今回は、1894年の秋に熊本から神戸にやってきた後の東京帝国大学外国人講師ラフカディオ・ハーンのことを話題にします。彼は来日前に、カリブ海の島、マルチニークに二年間滞在していましたが、神戸に家族とともにやってきた彼は、五百人弱の「日本人クーリー」が、マルチニークと同じフランス領の島、グアドループに旅立ったところだということを知らされました。当時の英字新聞『神戸クロニクル』の記事を読みながら考えます。奴隷制の廃止後、世界中各地で労働力が払底していた時代の話です。
司会:浜 邦彦 (早稲田大学)
司会:崎山 政毅 (立命館大学)


  日時:7月23日(土) 10:30-12:00   場所:パネルルーム4
再建される街、瓦礫の中の記憶
パネリスト1
〈日本語〉
編集される地域イメージ: 阪神御影地区とだんじり祭りをめぐって
松村 淳 (関西学院大学)
パネリスト2
〈日本語〉
記憶を探し求めて:プロスナ通りの再開発計画とユダヤ人ゲットーの記憶
町田 啓太 (神戸大学)
司会:大城 直樹 (神戸大学)


  日時:7月23日(土) 13:30-15:00   場所:パネルルーム1
Between His-story and Her-story
パネリスト1
〈日本語〉
反人種主義運動に参加した同性愛者たち:イギリスにおける「反ナチカーニバル」とその周辺をめぐって
稲垣 健志 (近畿大学)
パネリスト2
〈日本語/英語〉
クィア理論再考:映画「プリシラ」を題材として
岸田 未希 (神戸大学/西オーストラリア大学)
司会:田崎 英明 (立教大学)


  日時:7月23日(土) 17:30-19:00   場所:パネルルーム4
カウンター・ナショナリズムとしてのノスタルジア
パネリスト1
〈日本語〉
第二次大戦間のパリに生きた東洋の画家たち
二村 淳子 (東京大学)
パネリスト2
〈日本語〉
オスタルギー再考:東ドイツにおける外国人労働者
臼井 静香 (東京大学)
パネリスト3
〈日本語〉
寺山修司と現代日本のサブカルチャーにおけるノスタルジア
笹部 健 (関西学院大学)
司会:田中 東子 (十文字学園女子大学)


  日時:7月24日(日) 10:30-12:00   場所:パネルルーム2
戦争の記憶、戦後のコメモレーション
パネリスト1
〈英語〉
パールハーバー・ノスタルジアにおいて<サヴァイバー>であり<目撃者>であること: アリゾナ・メモリアルの新ミュージアム開館によせ
藤巻 光浩 (静岡県立大学)
パネリスト2
〈日本語〉
横須賀のイメージ変容とノスタルジア
塚田 修一 (慶応義塾大学)
パネリスト3
〈英語〉
Memory of the Japanese Defeat at the Pacific War through the New Wave Cinema
Marcos Pablo Centeno Martin (Valencia University / Waseda University)
司会:冨山 一郎(大阪大学)


  日時:7月24日(日) 13:30-15:00   場所:パネルルーム4
映像化される歴史、不可視化される記憶
パネリスト1
〈日本語〉
忘却、歴史、ドキュメンタリー:キムドンウォン監督の<上渓洞オリンピック88>を中心に
金 珠賢 (中央大学、韓国)
パネリスト2
〈英語〉
Family Photography: Hidden Absences and Constructed Meanings through the Phatic Dimension of Communication
Patricia Prieto Blanco (Ruhr University Bochum)
パネリスト3
〈日本語〉
分断された過去の記憶を巡って:戦後日本のアヴァンギャルド映像作品における芸術表現の再考察
齋藤 理恵 (早稲田大学)
司会:テヅカ ヨシハル (駒沢大学)